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東京地方裁判所 昭和46年(モ)4号 決定

申立人 小沢敏彦

被申立人 村岡文枝

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

本件申立の理由は、被申立人は、原告申立人被告出口政悟外一名間の東京地方裁判所昭和四三年(ワ)第一〇三〇一号損害賠償等請求事件において、二度にわたり証人として適法な呼出を受けながら正当な理由なく出頭せず、申立人に無益な出費をさせたから、被申立人にその費用の負担を命じ、その費用額を別紙計算書〈省略〉のとおり確定すべきことを求める、というのである。

右訴訟事件記録に徴すれば、被申立人は、申立人の申請により当裁判所から昭和四五年二月二七日および同年四月三日の両期日に証人として適式の呼出を受けながら、その都度、自分は自分の経営するマンシヨンの一室を短期間被告出口に賃貸したことがあるほか、同人について関知するところがないから文書で回答する旨記した書面を提出したのみで、右期日に出頭しなかつたことが認められ、これによれば被申立人が出頭しなかつたことにつき正当の事由があつたということができないことはいうまでもない。

しかし、右事件記録によれば、二月二七日の期日には、被申立人のほかに証人横越六月美が喚問され同証人の尋問が行なわれたこと、四月三日の期日には、申立人が被申立人を勾引すべきことを求めたのに対し、当裁判所はその必要がないと認めて証人決定を取消し、被告の準備書面陳述がなされた後弁論を終結したことが明らかである。従つて右事件の原告である申立人は、被申立人の証人尋問が実施できなかつたにせよ、右両期日に出頭する必要があつたのであつて、その出頭のための旅費日当の如きは被申立人の不出頭により無為に帰したということはできないものである。それが肯定できるのはたかだか証人呼出状送達の費用(記録によれば合計二四〇円)に限られる。

ところで、民事訴訟法第二七七条所定の不出頭の証人に訴訟費用の負担を命ずるかどうかは、受訴裁判所の裁量によつて決すべきものと解するのが相当であり、本件においては前述した諸般の事情を考慮し、被申立人にその負担を命ずることは適当でないものと判断する。

よつて本件申立を却下することとし、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 渡辺忠之)

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